日曜日は大道芸ワールドカップ?
いいえ、勉強会だったんです、けれど
月の第一日曜日、
わたしの予定は静岡中医薬研究会の勉強会で埋まることがほとんどです。
昨日の日曜日も、中医学講師の劉暁非先生をお迎えして
「老化と痛みⅡ」
をじっくり、独歩顆粒(どっぽかりゅう)を中心に勉強させていただきました。
勉強会が終わって、
皆さんの健康のお役に立つ勉強をしたなー、といつも通り満足感に浸りながら静岡駅付近を歩いていると、
大きな木の下の広場に黒山の人だかり。
そう、今日は大道芸ワールドカップの最終日だったんですね。
楽しそうな雰囲気に吸い寄せられて、中を覗いてみると、
パフォーマンスはちょうど終わったところ。
黒いタンクトップ姿のパフォーマーは投げ銭でずっしりと重くなった大きな袋を手に、満足そうな笑みを浮かべていました。 大層、盛り上がっていた様子。
あぁ残念、と思って立ち去ろうとしたら、次のパフォーマンスが案内されたのでそのまま見てみることにしました。
静岡市近郊在住にして、初めての大道芸観覧です。
年甲斐もなくワクワクしてパフォーマンスの始まりを待っていると、
ん?なんだか、違う。
出てきたのは小柄な日本人女性。
少女にも見える華奢なその女性は、言葉を発さず、目の表情や身振り手振りですべてを表現しようとしていました。
パントマイム、というのでしょうか。
黒を基調としたフラメンコ調のスカートに赤いチェックのマントを羽織ったその風貌は、パフォーマーというより“占いの館”風。
うっすらと微笑みながら手にした白い画用紙には、大きな黒い文字で演題が書かれていました。
月のおはなし
静かに流れる音楽に合わせ、
女性はゆっくりとした手つきで黒いレースの布を顔に巻きつけ、いつの間にか現れていた白い仮面と無言の会話をし始めます。
白い仮面は、きっと月。
客席に目を移すと、子供連れの家族達は早々に席を立ち始めていました。
子供さんにはちょっと難しかったのね。
一緒に観覧していた勉強仲間のK嬢と、一瞬目を合わせました。
どうする?見る?
せっかくだから見ましょうか、そんなやり取りの目線が交わされました。
音楽は徐々に軽やかになり、女性は少しづつ変化をしていきます。
膨らんだお腹からは、ふたつ目の仮面が登場。
そう、それは出産。
ふたつめの仮面は軽快なテンポですくすくと育ち、年頃の娘に成長します。
はにかんだり、誘惑したり、
青春を謳歌するかのようなダンスをして、、、
あーーら、あら!その時、舞台のそでから背広姿のおじさんが乱入!
とんだハプニングです。
年の頃は70歳代と思われる白髪のそのおじさんは、パフォーマーの妖艶な踊りに刺激されたのか、すっかりノリノリのダンスを披露し始めます。
会場をつつむ爆笑の渦。
おじさんは見かねたボランティアスタッフに踊りを制止されますが、飛び出て踊りだすこと、二度三度。
ノリノリおじさんが大人しく席に戻る頃、娘にも変化が現れます。
あ、また妊娠?
いえ、今度はさっき生まれた子が妊娠するんだから、その娘にとっては初産です。
そうして出産した娘は、きっと年をとり、
落ち着いた時間を迎える頃に、また最初の月と会話を始めます。
月のおむかえ。
それが何を意味するのか、きっと見る人それぞれに答えがあるのでしょう。
日頃、店頭で不妊症などいろいろなご相談をお受けする立場にあるせいなのか、
初めての大道芸鑑賞だったせいなのか、
このパフォーマンスはわたしの胸に深く染み入りました。
パントマイム風ですが、ひとつ芝居を見終わったような満足感です。
女性の一生は、月とともに
月経が来潮し、月が満ちるように子を宿します。
月のリズムを大切に
それは、
妊娠準備に取り組む女性の合言葉。
「月のおはなし」のパフォーマンスが終わると、
女性の持つ黒い帽子に投げ銭を入れようと真っ先に近付いていったのは、先のパフォーマーの白人男性でした。
相変わらず黒いタンクトップ姿で、何をか話しかけたようでした。
手にしていたのは、せ、千円札です Σ(゚□゚(゚□゚*)!!!!!!☆
パフォーマー同士の友情でしょうか。
華奢な女性がひとりで参加したことへの応援の気持ちでしょうか。
純粋にパフォーマンスに感動したんでしょうか。
わたしは自分の手に握られた銀色のコインが、少し恥ずかしく思えました。
そんな、ほんわか心が温まった秋の夕暮れでした。
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