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2009年10月22日 (木)

全力で負け続ける男

その男、太宰治。

 

太宰治を題材とした昨夜の某番組で、西加奈子さん(作家)の言葉がとても印象に残りました。

「太宰は全力で負け続けて死を選んだ人やけど、自分は負け続けても生きてみよう。」

みたいなことも、言っていたような気がします。

(関西弁がすてきな西さんでした。)

(一夜明けた本日には記憶は甚だしく曖昧となりまして、発言の表現が異なる点はお許し下さい。)

 

わたしが好きな太宰作品のひとつに 【駆け込み訴え】 があります。

キリスト教をモチーフにユダの独白というスタイルで人間のエゴイズムに迫るこの作品、なんて前置きは措いといて、

ユダを通してキリストを見つめるその手法に新鮮味を覚えつつ、どこかユーモアさえ感じさせる太宰の文体に魅了されたのですが・・・。

 

ジーザスクライスト・スーパースター(1973)

イエス・キリストの最後の7日間を描いたロック・オペラ、その映画化された作品を二度目に見たときにわたしはある種の喜びを感じました。

一度目に見た時には、

実をいうと、わたしはこの映画の冒頭で吐き気を催すほどの嫌悪感を抱いたのです。

鑑賞どころではなかったようにも思います。キリストを語るのにマイクロバスや鉄パイプがむき出しの足場が現れ、黒人のユダにテキサス人のイエス、東洋人のマグダラのマリアとくれば、当時のわたしの脳の中では視覚が消化不良を起こし、さまざまな情報が受信不能となっていたに違いありません。

 

映画は“ユダ”の独白を物語の中心に据えているという点で、【駆け込み訴え】そっくりに展開していきます。(エピソード自体は聖書にある通りですから、話の筋が似ているのはもちろん当然ですね。)

原作・原作戯曲は ティム・ライス Tim Rice 。

えっ? 原作は 太宰治 じゃないの?

ライスさんは太宰作品からインスピレーションを得たんじゃないかしら!

なんて思えたほどでした。

 

この際、原作が誰の手によるものかはよいとして、

ただ、ジーザスクライスト・スーパースター の興行が世界的に成功したことで、太宰の視点が現代エンターテイメントにも通用するものであったことが証明されたようで、心が少しくすぐったくなりました。

ある人がこう語っています。

「こんな天才の作品を読めるわれわれは、まったく幸せと言う他ない。」

人生に負け続けた男、芥川賞が欲しいと地団駄踏んで哀願した男。

その男、太宰治が自身に向けられるこの賛辞を耳にしたら・・・

今頃、彼はよろこんでいるかしらーーー

 

ちなみに今では、ジーザスクライスト・スーパースター(映画版) はわたしのお気に入りの作品のひとつになっています。人種の壁を越えた配役により、役の個性が一層引き立ったようにも思えます。

イエス・キリストに想いを寄せるマリアの澄んだ歌声、

死に向かうイエスの困惑、

そして裏切らざるを得なかったユダのエゴイズムと苦悩。

 

わたしは、そんな人間臭い聖者達に触れたかったのかもしれません。

 

(「きっとあなたはこの作品が気に入ります。」 と【駆け込み訴え】の単行本を貸してくれた友人にとってもとっても感謝しています。  須永さん、ありがとう  )

補足

ジーザスクライスト・スーパースター は ティム・ライス と アンドリュー・ロイド・ウェバー の黄金コンビによって生み出され、ブロードウェイ公演は1971年以降 2000年までに968回を数える中、興行的に大成功を収めました。

英国ロンドンを始め世界各国でも上演され、日本では浅利慶太の脚色で劇団四季により1973年に初演されました。イエス役には鹿賀丈史が抜擢され初主演にして大絶賛されたとのことです。本作はまさに彼の出世作となった次第ですが・・・、

鹿賀丈史のイエス・キリスト、これは見てみたかったです

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